嫌いな人、苦手な人ができる心の仕組み 2

なぜ嫌いな人や苦手な人ができるのか?

前の記事では、私たちの神経系には、ニューロセプションというシステムがあり、このシステムが相手の神経系や取り巻く状況を無意識に感じ取って、 『安全(大丈夫)、危険、脅威を検知して、『危険だ、脅威だ』と感じ取った時に、 「嫌い、苦手、なんとなくいやだ」という反応が起こりやすいというお話させていただきました。

しかしながら、このシステムがいつも正確とは限らず、誤作動で反応してしまうことがあります。

つまり、危険な相手ではないのに、危険や脅威だと感じてしまうことがあるのです。 (逆の場合もあり、危険なのに、危険アラームが鳴らずに、その人のそばに行ってしまうこともあります)

例えば、幼少期などに傷ついた経験やトラウマがある時も、私たちの神経系は不安定になりやすいため、誤作動が起こりやすく、 人に対して警戒心が強くなったり、居心地が悪く感じやすくなります。(ビクビクしたり、おどおどしたり、いつも気が張っていて、人の顔色をに影響されやすくなったりします。)

 

自分自身がどのような誤作動が起こっているか、その心の背景をを見ていくには、

その人の何がいやなのか、何に反応してしまうのかを見てみていきます。

 

まず自分の反応をよく観察し、『私はあの人の何が嫌なんだろう。あの人のどんなところに反応しているのだろう?』と振り返ってみましょう。

自分の心を落ち着かせて、俯瞰するように、相手の何がいやなのかを見ていくと、「話し方がイヤだ」とか、「あの表情が」、「あの態度が」、「あの目つきが」、相手が話した「〇〇という言葉がイヤ」、「相手の出しているエネルギーがなんとなくいや」、 またはそれが複合的に合わさった何かに反応していることに気がつくかもしれません。

誰かを苦手や嫌いだと思っている時は、「その人の全てがいやだ」と感じていることが多いかもしれませんが、よくよく観察してみると、その人のある部分に刺激され反応し、それが反復されて、ニガテ度・イヤ度が増して、その人自身がイヤでたまらなくなってきているのです。

 

②マイルールに反することをしている人

例えば、もしあなたが、

『A さんはわからないことがあるとすぐ人に聞いてくる。自分で調べないし。そういうの、なんかいやだよね』と思った時、もしかしたら、あなたは、『自分のことは自分でするべきだ!』と思っていて、 無意識に人に頼ることに対してハードルを高くしていたり、「甘えている」と感じて、自分に禁止しているのかもしれません。

このような思いを持つようになったのは、様々な心理的背景があると思います。もしかしたら、幼少期に、「もうお姉ちゃんなんだから、自分のことは自分でして!」と親に甘えることを嫌がられていたり(許してもらえなかったり)したのかもしれません。親に聞いてほしいことがあっても、何となく遠慮してしまう癖がついていて、『自分のことは自分でする』ことで親を助け、自分の居場所を確保し、、そうしたマイルールを無意識に作ったのかもしれません。

つまり、マイルールとは、、自分が愛されるために、認められるために自分がしてきたことで、二度と嫌な気持ち、寂しい気持ちを味わないために、大切な人から庇護を受けて生き延びるためにしてきたことなのです。

また、もしかしたら、助けてもらいたかった時に助けてもらえなくて、「私は助けてもらえない」と感じて、「自分でなんとかしなくては」と自分で頑張りすぎる傾向があって、人に助けを求めることに抵抗があるのかもしれません。

またそれ以上に、自分がすることで、『自分はできる』を感じることができて、表面上では自己肯定感を感じることができるため、『自分のことは自分でするべき』との思いを強くしているのかもしれません。

上記でお話ししたのは一例ですが、いずれにせよ、自分の生きてきた「マイルール」に反することをしている(と感じる)人を、苦手と感じやすいのです。

このような気持ちを抱えている時、本当は私たちの心の深いところでは、『誰かに頼りたい、甘えたい』という気持ちがあって、 それを抑え込んでいて、人に気軽に聞いている A さんが「甘えているように」見えて、イライラしてしまうことがあります。

もしかしたら、この人は自立しようと、「できるだけ自分で」、「誰にも頼らずに」頑張っていたのかもしれません。そんな気持ちを持っている時に、簡単に気楽に聞いてしまう人を見たら、イラっとしたり、ムカついたりすることがあるかもしれません。

そんな時は、「私は誰にも頼らずに頑張ってきた」と感じている自分に気がついて、 十分にねぎらいの言葉をかけてあげてくださいね。

今までの自分を振り返り、「本当によく頑張ってきたな」「大変な中、自分一人で、本当に頑張ってきたんだよな」としみじみ声をかけてみましょう。

その上で、今ここにいる大人の視点で、『本当はどうしたかったか、どうされたかったか、どんなことを望んでいたか』、自分の心の奥を覗いてみてください。

もしかしたら「本当は私もすごく甘えたくって、助けてもらいたくて、一緒にみんなで頑張りたかった、そんな経験がしたかった」 そんな思いがあるかもしれません。

こんな風に、自分の心の奥にある本当の希みに気がついて、改めてAさんを見てみるとどうでしょうか?

もしかしたらAさんの気軽さや親しみやすさを感じて、A さんへの見方が変わってくるかもしれません。

投影

例えば、『 A さんがBさんに質問をした、〇〇の使い方について聞いた』という時、もしBさんが、「自分のことは自分でするべき」「甘えてはいけない ( 自立するべきだ ) 」というルールを(無意識に)もっていると、A さんの行為が『自分で調べないで、簡単に人に聞く、甘えている』ように見えてくるのです。 ( A さんは単に確認していたのかもしれません)

このように、自分の内側にあるルールや概念、感情などを通して世界を見ることを、『投影』と言います。(これも無意識に行われています)

カメラのレンズに緑色のフィルターをかぶせると、世界の色は変わっていないのに、カメラのレンズを覗く人には、世界が緑色に見えるのと同じようなことです。
自分は、誰にも頼らず頑張ってきた、私はそれで成長してきた、、など、(誰も助けてくれなかった、 誰も認めてくれなかった、そんな中一人で頑張ってきたんだ) そんな消化されていない思いが心の奥に残っていると、こうしたネガティブな投影が起こりやすくなってきます。

そして、私たちが、嫌いな人や苦手な人ができるもう一つの理由は、

③トラウマや過去の傷ついた経験を想起させる人

幼少期などのトラウマだったり、過去に傷ついた経験がある時に、その場面やイメージ、その当時の感情や感覚を想起させる人だった場合に、苦手という感情が湧いてくることがあります。

例えば、大きな声出す人、なんとなく目つきが悪い、威圧的な態度(それ自不快ですが、、、)を見ていると、イライラする、ざわざわする、、、という時、、

その時の体の反応や感覚をよーくたどって見ると、 幼少期の父親のモラハラな態度に繋がっていたり、もしかしたら、そういった態度で「お前はダメだ」とか、「お前はわがままだ」と 責められたりした時の感覚やイメージとつながるかもしれません。

潜在意識がその時の感覚だと無意識に検知すると、 心よりも先に体が反応して、危険信号を送ってきます。

今の現状と過去の現状がくっついて、過去の反応が出てくるんですね。

サバイバルな状態になりやすく、心も体も萎縮して、思ったことが言えないと言うことがあるかもしれません。無意識にそのときの小さな自分の気持ちを再現したりします。

そんなときは、まずは自分の体を落ち着かせてあげるところから始めてくださいね。

セルフタッチがオススメです。

セルフタッチ

自分の体の落ち着かない場所、ざわざわするところ、怖くて気持ちが高ぶっているところに、 胸やみぞおちなどに手をおいて、深呼吸をしてみてもいいでしょう。

置かれている手のぬくもりを感じながら、 『こんなに怖かったんだ、嫌だったんだ』と大人のあなたから、体へ優しさを届ける気持ちで、は〜と、大きなため息をついてみましょう。

体は私たちが思っているよりも雄弁で、いろんなことを覚えています。これを身体記憶と言います。 それを小さな子供をなだめるように、見守るように、こんなに体が萎縮するほど緊張していた、パニックになる程、辛い体験をしていたんだ、その感覚を体に閉じ込めていたんだと理解しながら、体に起こっている感覚を今のあなたが気づきとともに共有していきます。

私たちは(幼い頃には)扱いきれない感覚や気持ちをフリーズして、心の奥の方にしまってしまいます。冷凍庫にそのままの状態で保存されているんですね。

こうしたものが溶けていくごとにトラウマが癒され、安全な記憶として整理され、 人の見方、感じ方も変わっていくことと思います。

誤作動を起こしていたニューロセプションに、少しずつ新しい情報がアップデートされ、

『あの時とは、違うんだ』 

『今は、ここにいる大人の自分が、こんな風に、自分の心を守ることができる』

 
という気持ちが湧いてきて、

 

あの時との間に架け橋がかけられるようになり、その時に起こったことへの(神経的・心理的)理解と共感が繊細に行われていくことで、トラウマからくる無力感、絶望感などが変容されていきます。

 

そして本格的なトラウマケアは、ぜひプロの手を借りてくださいね。

トラウマが癒されるごとに、あなたを制限したり、守るためのマイルールは必要がなくなり、 本来のあなたらしさや生命エネルギーが発揮されていくようになってきます。

トラウマ

トラウマとは、その時には対処できなかった体験を、その時の感覚、感情や気持ちごと、フリーズ させて、切り離してしまうこと。

例えば、その時の記憶が曖昧であまり覚えてないこともありますし、記憶はあるけれど、その時の感覚や感情はあまり感じない、または思い出すと激しい感情(怒りや悲しみなど)が突如が出てくることもあります。

トラウマは、『今』のありのままの姿を見えなくし、 過去を現在に侵食させていきます。

上述した例で言うと、大きな荒々しい声を聞くと、自動的に、幼少期のモラハラな父親と一緒に居た時の感覚が呼び起こされて、反応が起こるというようなことになります。

 

今回のキーワードでお話しした投影、トラウマやセルフタッチなどについて 詳しく知りたい場合は、ぜひ、協会セラピストが開催する講座にご参加くださいね。

さて、3つの記事を通して、嫌いな人、苦手な人について、思いつくままに書かせていただきました。自分の心の中で何が起こっていたかに気づくことは、自分をより理解し、いたわりや慈しみの眼差しを向けやすくしてくれます。そうした眼差しが育つごとに、心が穏やかになり、緩んできます。 自分との関係性が良くなるごとに、他者との関係性もよくなってきます。少しでもそうしたことにお役に立てていましたら、幸いです。

次回のブログ&動画は、徳山なおこさんの『セルフタッチ』についてです。どうぞお楽しみに!

心理カウンセラー・セラピスト

澤田 准(さわだ じゅん)

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