あなたの悩みやその症状、、あの人のあの態度や状態は、、、トラウマからかもしれない。

人前で話をするとなると、声が小さくなってしまう。
どんなに理不尽だと思っても、自分の意見や気持ちを言うことができない。
自分に自信がないし、自分なんか大したことないと思う。

人と話していて、疲れる。
リラックスして話せない。 一人の方が楽。
人の目をものすごく気にしてしまう。
人と比べて、落ち込むことが多い。

一人の時間を持て余してしまう。
暇な時間があると、急に不安になる。

いいひとを演じてしまう。
「相手の期待に応えられるようにならなきゃ」と頑張ってしまう。

「わたしが悪い」と思ってしまう。
「わたしは嫌われている」と感じる。

体がいつも痛い。疲れている。しんどい。 いつも首や肩が凝っている。
食べたり飲んだりすることでストレスを紛らわしている。

そんなふうに自分のことを思ったりすることはありませんか?

 

また会社で、こんな人はいませんか?

ちゃんと報告しなさいと言っているのに、できない。
目を合わせようとしない。 いつも心ここに在らずで、話をちゃんと聞いていない感じがする。
朝起きられず、いつも遅刻してくる。 無断欠勤をする。 体調をすぐに崩す。

いつもイライラしていて、怒ったように話す。 上から目線。
いつもせわしなくて、こちらまで焦るような気持ちになる人。

愚痴ばかり言っていて、いつも誰かの噂話をしている人。
お酒の量が多くて、見ていて心配になる人。

そんなふうに、一見トラブルメーカーのように見える人は近くにいませんか?

トラウマという視点からみてみよう

あなたが人と話す時に異常に緊張してしまったり、人に気を使いすぎてしまうのも、
あの人がいつもイライラしていたり、無気力に見えるのも、何か理由があるのかもしれません。

もしかしたらトラウマという「こころの傷」が、何かに反応して疼いているからなのかもしれません。

もし私たちが骨を折ったら、ギプスをして安静にして過ごします。
ゆっくりと細胞から毛細血管が新たに作られ、壊死した組織を吸収し、酸素と栄養分が補給されて少しずつ新たな骨が形成され、つなぎ合わされていく時間を待ちます。
周りの人たも骨折しているのがわかるから、無理をさせないように気遣いをしてくれることも多いでしょう。

けれど、心の傷は見えることができません。
話ができて、歩くこともできて、一見機能しているかのように見えるから、わたしたちはつい大丈夫だと勘違いして、自分や相手に頑張ることを強要し、気づかぬ負担をかけているかもしれません。

だからこそトラウマというレンズを持って、「自分の、その人の」、「心や体の見えないところで」、『何が起こっているのだろう?』と意識を向けてみると、今まで見えなかったものが見えてくるかもしれません。

自分や相手をトラウマという視点から理解してみると、

あなたがなぜ生きづらかったのか、どうして身体症状が出てくるのか、
あの人がなぜいつもイライラして機嫌が悪そうなのか、無気力で疲れているのか、

そして今、何に困っていて、何を必要としていてるのかが見えてくるかもしれません。

今回の記事では、自分や家族、一緒に働いている人たちの問題に見える行動を、トラウマという視点からみてみるために、トラウマとは何か、不適切養育とは何かということをお話していきたいと思います。

トラウマとは

こころやからだにとって、圧倒されるような出来事により心が傷ついたままの状態のことを、トラウマと言います。

生命が脅かされるような恐怖や悲しみ、無力を感じた体験などがケアされず癒されないままに、その時の記憶や感情、感覚などが身体の中で凍りついて残っている状態です。
トラウマは生命に関わるような大きな出来事、たとえば戦争や地震、津波などの自然災害、あきらかな身体的、性的な虐待や暴言などによって起こると思われることが多いかもしれません。

けれどそういった大きな出来事でなくてもトラウマになります。
いじめはもちろんのこと、友達とのトラブル、誰かのちょっとした一言、迷子になった経験、転倒や怪我、手術など、そうしたことでもトラウマになる可能性があります。

トラウマになるかどうかは出来事の大きさではなく、起こった出来事に対して、

あなたがどう感じたか、どう受け取ったかなんですね。だからあなたにとって、とても衝撃的なことや、ショックすぎて受け止めきれずにいたことなどもトラウマになります。

 

不適切養育

最近では、親のふだんの態度やふるまいが不適切養育となって、子供の健全な情緒や愛着形成、心理的安全の発達に多大なる影響を与えていることがあります。

*不適切養育とは(チャイルドマルトリートメント)
日常の中で繰り返される子どもへの不適切な関わりによって、子どもの健全な発達が妨げられ脳にも影響が出ること。言葉による脅し、からかい、罵倒、無視、子どもの面前でのDV、モラハラ、夫婦喧嘩…なども含まれる。
こうした成長過程での慢性的なトラウマ体験により、心身に不調が生じる「発達性トラウマ障害」になっていることがあります。
「その生きづらさ、発達性トラウマ? 」花丘ちぐさ著 より一部抜粋

つまり虐待とかそういったものでなくても、養育者の無意識にしている日常的なふるまいでトラウマとなり、子どもが大人になった今でも、職場や家庭でそれを再現しながら生きている、ということはよくあります。
例えば下記のようなことも、不適切養育に当てはまります。

<兄弟格差があること>
男の子を可愛がる、女の子を可愛がる、長男を特別扱いするなど、兄弟でその対応にあまりにも差あること

<いつも文句を言ったり、否定的なリアクションが多い>
部屋で勉強していたら、そんなに勉強しなくてもお母さんはできたわと言ったり、買ってきた服にダサいと文句を言ったり、いつもため息ばかりついているなど。

<子どもに愚痴を聞かせる>
養育者が自分の不満や不安、家族間(祖父母や父母など)の愚痴を聞かせ続けること

<子どもの呼びかけなどに答えないこと>
話しかけても、ちょっと待ってと言って放っておくことが多かったり、
子供の質問や呼びかけを自分のしていることに熱中していて気づかなかったりすること

<必要なケアをしない>
子どもが病気になったり怪我をしていても、大したことがないと思って病院に連れて行かなかったり、自分の心配事が先に立って子供のケアに意識が向かず、必要なケアをしない。

他にも、下記のような行為も含まれます。

・過度の心配性 ・過干渉で子離れできない ・子どもに思いやりのない言葉かけをする
・子どもに手をあげる ・子どもに嫉妬する ・夢を否定する・勉強、トレーニングを強要する

詳しくは、「その生きづらさ、発達性トラウマ? 」花丘ちぐさ著を読んでみてくださいね。
*上記の例は、私がセッションで多い例を書かせていただきました。 

私たちが育っていく過程の中で受けるこうした慢性的な不適切養育は、同調の欠如情緒的ニグレクトとなって、心身に不調が生じる「発達性トラウマ」になっていることがあります。

発達性トラウマは、私たちの健全な自律神経系の発達を阻害し、特に腹側迷走神経系の機能不全に陥らせてしまいます。

私たちが生まれてから大人になって人と心地よく交流することができるには、

心理的安全感覚…ホッとする安心感や安全感、受け入れられている感覚
健全な自己認知…..私はわたしでいい、わたしは大丈夫だ

という感覚が備わっていることがとっても大切です。

こうした心理的な安全感覚健康的な自己認知のもとで、人との温かなコミュニケーションが容易なものになっていきます。
心理的安全(感覚)、健全な自己認知豊かなコミュニケーションには、自律神経系の中でも腹側迷走神経系の発達に大きく関わっています。(*さらに知りたい方は、拙ブログ「安心の土台をはばむ、不適切養育とは」の記事も読んでみてくださいね)

腹側迷走神経系がしっかり働いていると、交感神経系や副交感神経系(背側迷走神経系)がほどよく調整されます。消化吸収、心拍、呼吸の状態もよく、心地よい内臓感覚を得ることができます。それは、身体からくる根源的な安心感につながっていきます。この安心感は、「わたしは私でいい、私は大丈夫だ」という健全で肯定的な自己認知に繋がり、世界に対しても安全で良いところに感じます。

しかしながら発達性トラウマは、こうした心理的安全(感覚)健全な自己認知豊かなコミュニケーションに必要な自律神経(腹側迷神経系)の発達を遅らせ、阻害していきます。

「その生きづらさ、発達性トラウマかも?」の著者である花丘ちぐささんは、腹側迷走神経系がうまく発達せずに成長すると、下記の3つの問題が生じてくると述べています。

まず第一に「自分は根源的に価値のない存在だ」という「どうしようもない恥の感覚」を持ってしまうこと、第二に人とうまくやることができないということ、最後に健康が損なわれるということです。(P86)

また「からだのためのポリヴェーガル理論」の著者であるスタンリー・ローゼンバーグさんは、脳神経系が適切に働かないために生じる広範囲な症状をヒドラの頭に喩えてリストにしています。
(症状はいろいろあるけれど、根元の原因は一緒という意味を、9つの首をもつ大蛇の姿をしたヒドラで表現しています) (P32-33)

ヒドラの頭ー脳神経の機能不全に関係する一般的な問題

慢性的な身体の緊張
・ 筋肉の緊張や硬化 ・ 首と肩の筋肉の痛み ・偏頭痛 ・背中や腰の痛み ・歯を固く食いしばる ・夜間の歯ぎしり ・目あるいは顔の緊張 ・手足の冷え ・不自然な発汗 ・運動後の緊張 ・関節炎 ・神経過敏 ・めまい ・喉の腫れ

感情的な問題
・イライラ、怒り ・「落ち込んだ」感じ ・絶望感 ・エネルギーの欠如 ・すぐ泣く傾向 ・全般的な不安感 ・重い感じ ・鬱状態が長く続く ・恐怖感 ・悪夢 ・落ち着きのなさ ・不眠 ・過度の心配 ・集中力の低下 ・忘れっぽさ ・欲求不満 ・過度の白日夢と空想

心臓と肺の問題
・胸の痛み 喘息 ・過呼吸 ・息切れ ・不整脈 ・高血圧

内臓-臓器の機能不全
・消化不良 ・便秘 ・大腸の炎症 ・下痢 ・胃の不調 ・胃酸過多、潰瘍、胸焼け ・食欲不振 ・過食

免疫系の問題 
・インフルエンザにかかりやすい ・軽度の感染症 ・アレルギー

行動的な問題
・頻繁的な事故や怪我 ・飲酒や喫煙の増加 ・処方箋の有無にかかわらず、薬の過剰摂取 ・自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如 ・多動性障害(ADHD)、アスペルガー症候群

対人関係
・過度な、あるいは妥当でない不安  ・合意形成が困難  ・セックスへの興味の喪失

精神的な問題
・過度の心労 ・集中力の低下 ・記憶力の低下  ・意思決定が困難

その他の問題
・過度の月経痛 ・皮膚のトラブル

こうした症状を今までトラウマと結びつけたことはなかったかもしれません。
けれど、プレゼンや苦手な上司を前にすると緊張してお腹が痛くなったりすることがあるように、私たちの心と体は密接に結びついていて、体の状態が心に、心の状態が体に影響されていきます。

ほかにも「私はだめだ」「私はできない」「私が悪い」、、、といつも責めがちなど、こうしたトラウママインドを頭の中で繰り返しているとしたら、健全な自己認知ができず、トラウマの渦にハマってしまっていると言えます。

上記のような症状や思いが自分の中にあるなと感じたら、下記のセルフケアをトライしてみてくださいね。神経系の機能の回復しトラウママインドから抜け出すには時間がかかりますが、あなたの中に新しいアプリをインストールするように、『安心や心地よさの感覚』、『自分を大切にする心』をインストールして、自分を調整することに慣れていきましょう。

セルフケアをする

STEP①<戻れる場所を作る、知る>
あなた自身が何に安心や心地よさを感じるのかを知っていきます。
何が好きで、楽しいと感じて、どんな場所や環境が好きか、誰と話すと落ち着いてくるか、
自分の中のいい感じをあらためて発見していきます。

 

例えば、
 ホットミルクを飲むとふ〜と落ち着いて、目の前のことに集中できるモードになる
 お昼休みに外の風にあたりに行く、公園に行くと気分転換できる
 仕事の合間に腕を伸ばしたり、ストレッチをする、ガムを噛む
仕事場以外でも、
 マッサージに行く、温泉に行く、岩盤浴に行く、みんなとご飯に行くetc.
自分らしく心地よい感覚に戻れる場所は、あなたの元気を取り戻しあなたらしく生きるためのリソース(資源、源、栄養)です。

  STEP②<パーツとして捉える>
例えばあなたが人と比べてしまい、落ち込みやすくすぐにやる気がなくなってしまう部分があるとしたら、まずは、その部分を自分の一部としてみていきます。あなた自身と捉えるのではなく、あなたにはそう一部分があるんだと認識していきます。
そしてそれは性格ではありません。心の傷つきやトラウマによって起こっている神経系の反応であり、その反応によって出てくる症状なだけなのです。まずはその部分はどこにあるのか、体の中か外側からかもしれません。その部分の声に耳を傾けてみましょう。

STEP③<きっかけは何?>
あなたが反応してしまう、きっかけを知ります。例えば落ち込みやすいのであれば、何がきっかけで、そうなったのかを自分で振り返ってみます。

 
 

STEP④<調整する>
ちょっと強い言い方が嫌だった、、など、きっかけがわかったら、ただそれを認め受け入れます。
『あの人の言い方がキツくて、非難されような気がして、傷ついたんだな』そんなふうに感じて落ち込んだことを認め、「落ち込んでいいよ」「落ち込むよね」と受け止め声をかけていきます。もしきっかけがわからなかった場合でも、自分から出てくる感情や感覚を非難することなく、まずは認め、受け止めてあげます。その上で、この落ち込んでいる一部分(パーツ)のために、何ができるかをみていきます。「とりあえず休む」でもいいでしょう。そのパーツのためにそれをしてあげる、、という気持ちを持っていることがとても大切です。
①で出てきたリソースをトライしながら、自分に合う調整方法を探っていきます。

調整するうちに、体が緩んできたり、呼吸が深くなってきたら、調整がうまくいっていったことを身体が知らせてくれています。

あくびが出る、ゲップが出る、ため息のような呼吸が出る、いい感じに力が抜ける、頬の筋肉が緩む、お腹が鳴る、伸びをしたくなるなど、いろんな方法で体は教えてくれます。

もしそうならなくても、どうぞ自分の心と体に興味を持って、自分を楽にしてくれるのはどんなことがあるかなと自分癒しの旅をしてみてくださいね。

<セラピストと一緒に>
もし、トラウマのシーンや不快な感覚が出てきて、大きすぎたりするのであれば、それはセラピストと一緒にワークしましょう。信頼おけるセラピストのもとで、丁寧に解放していくのが大切です。

気になる人がいたら

もし職場でそういった問題と思われる行動をする人がいて、あなたがどんな対応をしたらいいか迷ったりしているとしたら、下記のようなこともしてみるといいかもしれません。

STEP①<パーツとして捉える>
その人の問題と思われる部分、イライラしている、落ち込みやすい、やる気が出ない、ダラダラしている、、そんなところを、その人の全体として捉えるのではなく、その人を構成している一部分として捉えてみます。

STEP②<困っていることは何?>
その部分が困っていることは何かを聞いていきます。
朝起きれないのであれば、睡眠が足りないのか、寝付けないのか、何か不安があるのか、
そのパーツさんの困っていること、会社や上司としてできることはないかを聞いていきます。
この時、解決しようとしないことが大切です。解決しようとするよりも、その困っている部分の気持ちを聞いてもらえるということが、その人全体のシステムが安心に傾きやすくなります。

もしできないという気持ちで、落ち込んでいるのであれば、どうしてそこまで、できる、できないにこだわっているのかを聞いて、その部分がどんなことを信じていて、困っているかを聞いてあげてもいいかもしれません。
できないと、会社を首になる、、など、思っているとしたら、そうでないこと、
またできないと思い込んでいるのだとしたら、その人のできていることをゆっくりと丁寧に伝え、その人の視点をニュートラルにしていくこともいいでしょう。

話を聞いてくれる人がいること、困ったときに一緒に何か対応を考えてくれる人がいることは、その人にとって大きな安心となり、今までとは違う体験として、心身に刻まれていきます。それは、トラウマを乗り越える大きなリソースになります。

それでもその人が困っていたり、何か症状があったりする場合は、産業医かカウンセラーに相談に行くことも視野に入れてもいいでしょう。

トラウマのない人はいない

私たちは大小問わず、必ずトラウマを経験しています。トラウマを経験していない人はいなく、逆に言えば、トラウマを乗り越えて生きながら、しなやかに生きる力を身につけていき、傷ついたからこそ心からの思いやりを持って、相手に接することができるようになります。

また自分の力を信じ、相手を信じることもできるようになってくるかもしれません。

困った人を困った人として切り捨てていくのではなく、トラウマという視点を持ってみていくと、その人の痛みや恐れ、大切にしたい思いなども見えてきます。あなたの隣にいる人のそうした一面にあなたからの優しい眼差しが向けられ、真摯に対話をすることで、相手の心(痛み)を溶かすきっかけになるかもしれません。

 

 

心理カウンセラー・身体心理セラピスト
澤田 准

こちらの記事は、下記からインスパイアされて書いております。さらに詳しく知りたい方は、ぜひ読んでみてください。

トラウマインフォームドケア 野坂祐子著
その生きづらさ、発達性トラウマ? 花丘ちぐさ著
体のためのポリヴェーガル理論 スタンレー・ローゼンバーグ著

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