虐待やトラウマの連鎖を作らないために
心理セラピストとしてセッションをしていくと、虐待の体験を語る人が数多くいます。
それは統計にはのらない、一般的な普通の家庭と見られていた場所で起こっています。
虐待の行われる家庭の背景には、往々にして愛着の問題があります。また虐待の加害者は幼少期は被害者であることが多く、こうしたトラウマの負の連鎖が家族間で見受けられるのが特徴です。
虐待によるトラウマのPTSD化が知らず知らずのうちにその人の内側で起こっていて、それに気づかずに子供への虐待が連鎖していっているのです。
きちんとした愛着のある関係を築くことができずに育った子供は、脳神経的にも心理的にも未発達な部分を持ち、また生命のトラウマを乗り越えていきたいという生命の衝動もあるため、トラウマの状態を無意識に再現して乗り越えようとしていきます。
神経的にもその過去の状態を保持し続けているので、なんでもない出来事に反応しやすい(相手から攻撃を受けていると感じやすい)状態にあります。神経状態が交感神経が優位で、安心安全な状態である腹側迷走神経系の副交感神経が働きにくくなっています。
また背足迷走神経系が活性化した場合は、心身がフリーズ(凍りついて)して、うつや解離状態となり、生気がなく感情や感覚が薄れ、引きこもりになりやすくなります。
つまり、トラウマをおった子供たちは、それから何年たっても神経状態がその状態を保持していて、反応しやすく、ゆえに心(思考や感情)も守りや戦いの姿勢を保持しやすいため、問題行動が多くなってきます。
こうした背景を知らずに、ただ加害者を弾圧、糾弾し、悪者にしていく社会は、さらなる被害者を増やすことになっていきます。先にも述べましたが、加害者はかつての被害者なのです。
私たちは全ての人がトラウマをおっています。戦争経験をした世代やその世代に育てられた世代も十分な愛情や安心感を得られないまま育った親に育てられていきます。
つまり、ほとんどの人が心の負荷が増えたり重なったりした時に、何かしらの心身の問題を抱えてしまいやすいという状態にあるのです。
私たちは精神的な負荷が増える時に、問題が増えやすくなります。
例えば、仕事上の人間関係の軋轢、出産や育児などの精神的な負荷、夫婦間の不和。
こうしたことが重なった時に、私たちは自分の気持ちがいっぱいいっぱいになり心身を圧迫していきます。
うつ的な状態に陥ったり、慢性的な身体症状が出やすくなったりします。またアルコールやタバコ、甘いお 菓子を食べることが増えたり、ギャンブルなどといったもので一時的に紛らわしていきます。
けれど、紛らわすことだけで、私たちは自分自身の心のケアをする術を知りません。